LLRのM-1 LAST YEAR〜M-1に向けてチャンピオンにネタのダメ出しをしてもらおう!〜2017.7.13 


LLRが前回のNONSTYLE石田に続き、今回はパンクブーブー哲夫からダメだしを受ける。
福田いわく「パンクブーブーさんは僕らの始祖」
LLRはお笑いを全く知らずにNSCに入学し、卒業後ルミネのゴングショーに出ていたが1年半の間、1度も勝つことができなかった。そんなとき、友達*1に先輩の単独ライブを手伝わないかと誘われ、手伝ったのがパンクブーブーの単独ライブだった。そこでパンクブーブーのネタを見て、「漫才はこうやって作るのか!」と学び、真似してやってみたところ、ゴングショーに受かるようになったと。
福田「あれがなかったら、僕ら確実に辞めてますから。歌舞伎町でホストやってますよ」
哲夫「それで何年かしたら(単独の手伝いに)来なくなって。もうお前らから学ぶことないって。それでラストイヤーになったら『もう1回くらい聞いて利用してみるか』っていうことか!」
そして、哲夫は「アドバイスすることは1つしかない。石田の言うことをちゃんと守れ。間違いない」と。


今回LLRがダメだしを受けたネタは「部活」「パン屋」「女子会」の3本。
前回やった「パン屋」と「女子会」は石田の意見を取り入れて大改変していた。その改変部分も合わせて書く。そして前回はやらなかった「部活」のネタ。この場でこのネタをチョイスするLLRの感覚に、だからコレを今年M-1でやるのおかしいだろ!!と憤ったが、結果的に他の2本と比べられて興味深かった。



部活

このネタは前回披露していないので、新たな改変はなし。少し前からの変更バージョン、茶道部が卑しく、針山からボビンになっている程度。

ダメ出し

  • 「俺だったら1つでいく」
    まず登場する部活が「茶道部」→「手芸部」→「演劇部」と3つあることに関して。
    笑いは階段になっていくべき。1段で10の笑い、次の段に上がるとまた10積みあがって20になる。5段上がったら50の笑いになる。50までいくと、同じ話題ならそこからは小ボケでも50の笑いのままでいく。しかし、例えば3段の段階で話題を変えると、どんなにおもしろいボケでも30から40に積みあがることはなく、一旦リセットされて、10から始まることになる。(これはホワイトボードに階段の図を描いて説明していたw)
    お客さんもその話の続きを聞きたいと思っているのに、別の話題になってしまうから一旦リセットされてしまう。
    そもそもこのネタは部活を変えただけで同じボケをしている。
  • 審査員から見ると
    茶道部のボケが無くなったから別の部活にいったと思われるだろう。
    審査員にボケが無くなったと思われるという部分に関して福田が「(そんな風に思われるなんて)知らなかった…」と言っていた。

  • ツッコミについて
    これはパン屋のネタにも言えることだが、伊藤が「ちゃんとやって」というツッコミをする。「ちゃんとやって」というツッコミをする人はよくいるが、実は一番ダメなツッコミ。なぜダメなのかというと、ツッコミというのはボケを減らしていく作業だからである。
    基本的にボケはツッコミの言うことをきかないと漫才は成立しない。ツッコミの言うことをきかないボケはただギャグをやっている人になってしまう。
    例えば面接のコントがあったとする。面接官(ツッコミ)が、受験者(ボケ)に「座れ」と言う。すると受験者(ボケ)は椅子の横に立膝で座る。面接官(ツッコミ)は「いや椅子に座れ!」とツッコむ。するとボケは次は絶対に椅子に座らなければならないので、椅子には座るが後ろ向きに座る。するとツッコミは「逆逆!」とツッコむ。ボケは後ろ向きに座れなくなるので、今度は椅子の上に正座する……というように、ツッコむことでボケが狭まっていく。その中でボケることで笑いが生まれる。だから最初から「ちゃんとやれ!」というツッコミをされたら、ボケは何一つボケることができなくなって、言葉通りちゃんとせざるを得なくなる。
    これはお客さんの視点からも同じことが言える。お客さんも次のボケを予想しながら見る。ツッコミによって狭まっていくボケを次々予想し、想像できなかったボケが出てきてウケるのだ。
    だから「ダメだよ」「ちゃんとやってよ」という曖昧なツッコミではなく、どうしてほしいのかを具体的に言うと、次のボケのフリにもなる。

  • 伊藤のツッコミは思い込み
    茶道部にはイヤなやつなんていない」というが、そんなことないだろう。伊藤の思い込み。ツッコミはお客さんの気持ちの代弁である必要があるのに、これではお客さんが伊藤の味方にならない。最初のツッコミが思い込みだから、その後、福田の演じる茶道部のヘンなやつに対して伊藤が「そんなやついない」とツッコんでも説得力がない。「伊藤のヘンなセリフでおかしくなっている」w
  • 最初のフリ
    「青春ていいですよね。部活は青春でしたね。でもイヤな先輩もいましたよね」という最初のフリ。
    最終的にどうなったら正解なのかがわからない。最初にお客さんも正解を思い描けたほうがよいだろう。
    例えば「先輩のしごき厳しかったよね」「僕は耐えられるけどね」とか、“しごきに耐える”という具体的なことを提示する。ここから具体的に哲夫ならこういうネタにするというデモンストレーションがすんごい!
    茶道部ならどうしごくか。

ボケ「声出してけ〜」(手芸部の部分で実際にあるボケ)
ツッコミ「茶道部なんて声出しないだろ!」
ボケ「結構なお手前で〜(大声)」
ツッコミ「大声で言うことじゃない!わびさび考えろ!」
ボケ「ワビッサビッ(ランニングの掛け声風に)」
ツッコミ「茶道部ランニングしないから!!」
なんやかんやあって…
ボケ「(遅刻してきた後輩に)正座しろ!!」
ツッコミ「元々正座してんだよ!!」
もうパンクブーブーのネタだよ!!ちょうおもしろい!
哲夫「あと野球部だとケツバットとかあるかもしれないから、ケツししおどし…とかね」
福田「けつししおどし…(メモする)」
竹内「そのままメモしない!これ哲夫さんのネタだから!」




パン屋

前回の石田ダメだしによって、大きく改変されていた。まず、伊藤の死んだ妻の名前が「みさこ」から「ようこ」に。*2 そして福田の購入するパンは30個から12個になり、畑に埋められた妻以外に「モモコ」という子供が登場。双子のパン屋やうどん屋をやりたかったパン屋の設定はなくなり、死んだ妻を冷蔵庫に入れたパン屋だけになっていた。以前はうどん屋をやりたかったパン屋に焼きそばパンを買いに来る高校生は、警察官風にやってくるように変更。
これは見ているファンとしては大分アツくて…すごい良くなってる〜!と思ったのだった。石田のダメだしを福田なりに取り入れて、面白くなったと思った。購入するパンの数を変えりゃいいってもんじゃない…とは思いつつ、子供を登場させて個数を増やすという上手くはないけど苦悩は感じられたし…*3
なにより、伊藤の反論が大分自然になっていていて、前回のライブ中は「福田、全然わかってないんじゃないの…」と思ってしまったが、ちゃんと分かってたんだなーという風に関心したり*4
部活のネタの際に哲夫が言っていた、テーマを一つに絞れ!というのが、まさにパン屋の改変では行われているじゃないか!だからパン屋の改変は面白かったんだなー!と思ったり。しかし、哲夫のダメ出しでは本質が見えてくる……

ダメ出し

  • 何をしたいネタか分からない
    「パン屋の練習」とは何をするのか分からない。これもまず何をしたいか最初に正解を示す必要があるだろう。「ヘンな設定だからヘンな客が来てもおかしくない」→「だからヘンな客に対応しよう」とか。

  • そもそも奥さんを冷蔵庫に入れているパン屋を(ツッコミが)受け入れたら、もうその後何をしてもいいのでは?
    「パン12個ください」に対してツッコミが「一人で12個も?!」って言うけど、冷蔵庫に奥さん入れてるんだから、もうパンが多いとかどうでもいいよね。ww

前回も石田に指摘された「一人で○○個も?!」である。そして、哲夫の“そもそも”が根本を揺るがす。

  • 初速が遅すぎる
    最初のボケまでが長すぎるだろう。自分としては最初の10秒でボケがないとダメだと思う。賞レースのお客さんはネタをたくさん見て見飽きているので、最初のボケまでに時間があると「ボケない人だ」と思って興味を失う。最初の1分間ボケずにいても大丈夫なのは超有名な人だけ。有名な人ならお客さんは信頼して待ってくれる。最初にギャグをやる人もいるが、それはもろ刃の剣である。ギャグがウケなかったら、その後、ネタが面白くても全くウケなくなる。最初の10秒で出すボケはたいしてしてウケなくてもネタ中のボケならよい。この人はボケる(面白い人だ)と思わせることができればよい。

  • 伊藤のツッコミ
    部活のネタの際にも言ったこと。「ちゃんとパン買いに来て!」というツッコミは、ボケとしては「じゃあ、(ボケずに)ちゃんとパン買いにいってもいいの?」と思っちゃう。

  • 警察手帳のくだり
    徒手帳を警察手帳のように見せるくだりがあるが、本当ならその時点で生徒手帳だと分かるので、「高校生じゃねーか!」となるのでは?そこは警察手帳を見せるのではなく、演技でもって、端々に「ホシが…」などのセリフを入れることで警察を匂わすのがいいだろう。*5
  • 伊藤のツッコミ2
    「パン屋に学割ないわ!」というツッコミ。学割をやってるパン屋はなくもないだろう。また伊藤の思い込みツッコミである。
    伊藤「(ツッコミは)人生でやってるんで」w

人生でツッコんでた!!

  • このネタの何を面白いと思って作ったのか分からない
    これを指摘された福田「そうなんです…自分でもわからなくなって…。そもそもドラマのワンシーンをやっただけのネタで。まだ手探り状態。“伊藤が死んだ奥さんを隠してる”のが面白いのか、“パン屋の客”が面白いのか、“異様(死んだ妻を冷蔵庫に隠してる伊藤)vs異様(死んだ妻を畑に埋めてる福田)”が面白いのか3つで悩んでいる。
    哲夫はそれを聞いて「だろ??」と。やりたいことが見えてこない。やりたいことは最初に決めておかないといけない。M-1の3.5分の間でできるのは、多くて2コである。
    そして、このネタを作ったときにやりたかったことを福田が思いだすのだった。
    元々は「異様な設定でパン屋をやらせるが客がパンを買わない」というところが面白いと思った。「ヘンなパン屋に『おにぎりください』って」しかし全然ウケないので、そこを切ったのだと。それを聞いた哲夫は「そんなネタ捨てちまえ!」と。自分が面白いと思った部分をブラッシュアップすべきであって、そこがウケなくても残してウケるようにするべき。自分が面白いと思った部分を切ってしまったネタなんて捨てちまえ。15年もやっていて、面白いと思ったことは面白いはずなんだと。

「おにぎりください」についてのねじれ現象はまるまる1日LLRのときにも思ったが、ファンはあの部分好きだったんだよ!モリエールで初めてパン屋のネタを見たとき、“妻が死んだことを受け入れられなくて妻の死体を冷蔵庫に入れていたらなんだかパンが美味しいと評判になってしまったパン屋”とかめちゃくちゃ複雑なコントイン*6しておきながら、最初のボケ「おにぎりください」かよー!!!LLR最高だな!!と思ったよ。ウケないと判断したのはなんだったの?と問い詰めたい。




女子会

石田に言われた通り、伊藤が「女子になりたい」というフリはなし。このネタも大分改変されて、以前は福田が一人で女子会の再現していたが、それを二人でやる部分が増えていた。そして女子会を見ている37歳のおっさんは怖いというくだりを追加。伊藤との掛け合いを増やすためか伊藤が福田にかみつく場面が多くなり、女子会の再現中に話題を変えるときは「ウチのワンちゃんが…」と言うようになった。オチは石田案をそのまま採用。
ただ大幅な改変も、パン屋と違ってこのネタは面白くなっていなかった。以前より格段にウケなくなっており、なんということ!と思ったが、哲夫のダメ出しによって理由が見えてくる。

ダメ出し

  • 何をやりたいのか
    パン屋同様、このネタも何をやりたいのかテーマがはっきりしない。「女子会あるある」なのか「気持ち悪いヤツ」なのか、「(伊藤が)ボロッかす言う」部分なのか、どれが一番やりたいのか。

これは石田にも言われていたと思う。遡っては、まるまる1日LLRM-1のネタを決めるライブにて、ポイズン吉田に言われていたことにも通ずる。*7ずっと言われているけど、変えない理由もなんとなくわかる。完全に女性を敵にするのはイヤなんだろうな…という。


  • 「こわい」をテーマにしたらどうか。
    「女子会こわい」で始まるから、最後にお前(福田)のほうがこわいとなって終わるようにする。
  • 逆に伊藤の思い込みツッコミをつきつめる
    二人で女子会をやったときに、伊藤のツッコミが思い込みであるならば、「どこでワンちゃんの話を入れるかが女子会だ」くらいの極端なことを言ってもいい。
    そして「王貞治でワンちゃん違い…」などどんどんワンちゃんでネタを広げる哲夫。
    ものすごい速さでツッコミの台詞を含めてボケを考え出していき、客席も舞台上のLLRもMCの竹内も圧倒されていた。竹内「もうみんな『すごい…』としか言えなくなっている」

さらに哲夫は「こわい」をテーマにしたら…?と言ってその方向でまた恐ろしいスピードでネタを作っていた。湯水のようにネタを生み出す哲夫。鉄人。しかし、この「こわい」という部分は今回の改変でできた部分なので、元々このネタで何が面白いと思ってこのネタを作ったか…という点は解決されず……




「石田さんが哲夫さんは『少ない材料でフルコースを出せる』*8って言っていたけど本当にそうですね」と伊藤が言っていたが本当に一瞬でフルコースができる状態を見せてくれた。
3つのネタのダメ出しを聞いてみて、前回石田のダメ出しを参考にして大改変した「パン屋」と「女子会」に哲夫から「このネタの何を面白いと思っているの?」という質問が出たことが、もう…すべてなのでは……。M-1用に改変したけれど、結局それは自分が面白いと思った部分じゃない、という……。

哲夫は、最後にLLRならテクニックである程度いくだろう。ただテクニックでウケても準決勝あたりまで。なんかしらのひっかかりがないといけない。だから、1つ推すところを作っていく。自分らの推すところを決めろ、と話していた。
8月から1回戦が始まるのにもう遅いと哲夫が指摘していたが、なんかもう…LLRM-1どうなるか、という部分は割とどうでもよくなって、自分たちの漫才をネタに差し出て、レジェンド二人の話を聞ける機会を作ってくれたLLRに感謝するよ…という気持ち。とはいえM-1応援してるよ!!9月頃3回目をやる予定とのこと。楽しみで漏れそう。

*1:友達って!

*2:結局伊藤が折れたんだねw

*3:感じられちゃいけないのかもしれないけど…

*4:プロに対してそんな風に思って申し訳ない

*5:これは前回石田さんに言われたことと全く同じじゃん!!

*6:コントイン

*7:吉田は、女性に共感させたいのか、自分がディスられている側だと思わせたいのか、どちらかに寄せるべきだと言っていた。

*8:5分でフルコースを出せるじゃなかったかな?