LLRのM-1 LAST YEAR〜M-1に向けてチャンピオンにネタのダメ出しをしてもらおう!〜 2017.6.12


あまりにも面白かったので記録を残しておくことに。
このライブはタイトル通りM-1ラストイヤーのLLRがチャンピオンにネタを見てもらってダメ出しされよう!というありそうでなかった贅沢な企画。友人が吉本だからできる企画だよね〜と言っていて、たしかに!と思った。
今回のゲストはNONSTYLE石田。ここはやっぱり石田さんでしょう!とオファーしたと福田。一番期の近いチャンピオンでもある。石田曰く「ちょうど相方がいなくて一人だったので受けやすかった」とw
MCはおなじみ竹内健人LLRと自分は同期で15年目。2002年からやっている。「ここ(客席)に20歳の子いると思うけど、その子が5歳のときからやってる。2002年に生まれた犬だったら大体死んでる」と言っていた。
LLRは楽屋で石田に「膝がガクガクいうくらいダメ出ししてやる」と言われたそう。M-1の本番だったら脅されないけど、今日は脅されているから本番より緊張するとおびえるLLR
石田は「LLRのファン大丈夫?」と心配していたが、LLRのファンはLLRが苦しめられているところを見たがるので大丈夫だと福田が説明し、竹内も「本当にそうです。LLRのファンはLLRのライブでLLRをスベらせますから」と同意していた。だから大好物だろうと。

今までは誰の意見も聞いてこなかったが、ラストイヤーは他力本願でいこうと決めたと福田。
伊藤「一番ダサいですよね。最後までポリシーを貫き通すわけでもなく…」w


LLRは3本連続でネタを披露。石田は客席から鑑賞。漫才の台本を渡されている様子。わー!

ここからネタばれなど関係なしに石田からのダメ出しを詳細に書くので、「結婚式の二次会」「パン屋」「女子会」のネタを見たことがない人は読まないでほしいし、見ていないと全く意味が分からないと思います。書いてすみません…

結婚式の二次会


伊藤は「本番以上に緊張した」と*1。石田「1本目緊張してたなーw」

  • ネタの入り
    福田が「がんばっていこうと思ってますけど…」と言うが、あんな落としたトーンで言うなら言うな。ルーティーンで言っちゃうのかもしれないけど、聞き心地が悪い。お客さんは最初のトーンでその後も見るから、落ちたトーンのままネタを見てしまう。

前に浅草で同じようなことを巨人師匠にも言われていたのを見たことがある。そのとき福田は「ヒトラーの方式で最初は聞きづらく入って、人をひきつけるためです」と口答えしていたが、今回は「癖で最初になんかモゴモゴしちゃうんですよね」と素直に聞いていた。

  • とにかくネタに入るまでが長い
    「最近結婚できない人が増えている」→「結婚相手を探すのによい場所がある」→「結婚式の二次会です」というところは「結婚式の二次会で出会って結婚する人が増えてるんですよ」の一言で済むだろう。
  • なにより「結婚したい」と言っている伊藤が結婚しているのはどうかと思う。
    誰もそんなこと知らないよ、というのであれば、最悪指輪は外さないといけない。
    • たとえばこれをM-1の予選でやったら
      伊藤が結婚していることを知っているお客さんと知らないお客さんがいる。そうすると見ている人に温度差が生まれ、それがよくない。人によってウケ方が違って「客席でガタガタとノッキングがおきてまう」のは避けたほうがよい。
    • だからとにかく「入りが違う」
      結婚したいと思っているわけでもない伊藤が怒る意味がわからない。M-1決勝にいったら前フリのVもあり、そこでは絶対に結婚のことに触れるだろう。*2

この件は以前からファンの間でも言われていることだよねーと思いながら聞いていたが、石田の視線は当然ながらもっと奥まで届いていて、客席の温度差をも視野にいれているのだった。指輪を外すだけじゃすまされない。すごい。

  • 昨今の傾向として、漫才は人間性を出さなければいけない。
    だから伊藤が本当に思ってないのはダメ。現状は2人のぶつかり合いにならずに「2人で一緒に面白いネタを作ろう」になっている。
  • 二次会のコントの入り福田扮する女が「どうも〜」と言う場面
    とても好きだが削ろうと思えばできる。最初から「キレイね〜」でもよい。ただ面白い部分なので、他に入れたいボケがあって最終的に削らなければならない場合に最悪削れるよ、というくらいで。
  • とにかくムダは省け
    ムダのある5分ネタをやるなら、ムダなく3分で終わらせたほうがいい。
  • 「ババアじゃねえか」について
    めちゃくちゃ面白いが、M-1で「ババア」は評価されづらいだろう。審査の際にマイナスしやすい。「まず上沼恵美子は評価しない。カミナリみたいになる可能性がある」w
    福田「決勝では評価されないってことですね?そこまではいけますか?」

石田とLLRの目線の違いを感じることに。

  • 決勝で優勝する用のネタと準決勝で勝って決勝に出るまでのネタがある。
    優勝する用のネタは準決勝から勝ち上がるのが難しい。決勝を見ていると優勝を見据えて作られたネタと決勝に行ければいいという目的で作られたネタがわかる。前回のM-1で優勝する用のネタを作ってきたのは決勝の決勝に残った3組と、それ以外だとあと1組だけだったと見る。

あと1組誰だ!?と会場の人全員が思ったはずw*3

  • 「ババアじゃねーか」のツッコミは伊藤っぽくない。

これはLLRのファンからすると、伊藤ちゃんは言いそうだと思うけど、「ババアじゃん」くらいの感じか。

  • 「ババア」の年齢が定かじゃない。
    オレオレ詐欺のくだりで、「息子に300万円振り込まなくちゃ」というワードがあるが、孫の結婚式に出ているということは、息子はいくつなんだと感じてしまう。

これに対して、福田は「年齢設定はなかった。考えたこともなかった」と言っていたが、このネタが最初に作られた頃はこのオレオレ詐欺のくだりはなくて、結構なおばあさんの設定だったと思う。*4意識していなくても、なんとなくの無意識で年齢設定はあったのではないかな?無意識だから改良していくうちに年齢設定がなくなったのでは。そして、そういうの気になる系のファンも改変を一緒に見ちゃってるから年齢設定のおかしさに気づかないという。ファンが気づいたから変わるもんでもないけど。

  • 「300万円振り込まなくちゃ」というワードの前にオレオレ詐欺だと気づかせたい。
    例えば、電話がかかってきて「息子が交通事故に…」とか…

これに福田がすぐに「それいいっすね!すぐ使える!」と。竹内が「そうですか?どんな風に?」と訊ねると、「息子から電話が…」「交通事故ですって!」「すぐ300万円振り込ま……」あれ?となっていた。すぐできないじゃんw

  • とにかく、福田には演技力があるから「言葉を使うな」
    石田「福田は演技力があるから!福田は!」
    伊藤「文脈で察しました。そういうことですね?」w
  • 「オチが嫌い」
    これは3本共通で言えること。「終わらせにいってるだけ」
    • 福田「俺オチ考えるの苦手なんすよ。オチだけで2時間くらい悩む」
      石田「それで全然良いオチ思いついてないやん」
    • 最後のオチで盛り上がって終わった方がいいに決まっている。石田の一番嫌いなオチは「お前なにができんねん」「漫才しかできん」というもの。
      石田「大っきらい!!安易に考えやがって」w
  • LLRには二人とも笑いが収まってから次にいくクセがある。
    「おさまる前にケツをくっていけ!」収束しないうちに次にいくと盛り上がる。

そういう話に、福田が「気づかなかった。考えたこともなかった」と言うと、石田は「それは才能があるからだ。」と言うのだった。自分は才能がないからめちゃくちゃ漫才を研究したのだと。才能のある人はそういうのがなくてもなんとなく笑いが取れてしまうから研究しないのだと。「才能のある人ほど努力してほしい!」とのこと。
竹内(MC)「人を褒めて教えるのも上手いですね〜」
最終的に福田が、石田の意見をすべて採用すると、このネタは6行くらいになってしまう、と言っていた。


パン屋

  • これも入りがおかしい
    パン屋をやりたいと伊藤が言って、福田が「じゃあパン屋の練習をしよう」と言うと、伊藤が「パン屋の練習??」となる。「お前さっきパン屋やりたいって言っただろ!」。
    • 会話としては正しいのかもしれないが、今は漫才のルールというのが知れ渡っているから「パン屋をやりたい」と言ったらパン屋のコントに入るものだとみんなが思っている。だから不要。
  • 福田がヘンな設定をもってくるので「パン屋の練習?」となった伊藤の不安が的中する形になるのもおかしい。*5
  • ヘンな設定をもってこられて、伊藤が「どういうこと?」と戸惑うものの嫌がらず否定しないのがおかしいだろう。伊藤がパン屋をやりたいはずなのにやりたい感じがない。二次会のネタに続き、伊藤の内面が出ていない。
  • このネタをM-1決勝でやった場合、このヘンな設定で客席から「ヒェー」という声が上がる可能性がある。決勝のお客さんは準決勝のお客さんとは違う。ヘンな設定に「ヒェー」という声をあげる。お笑いファンはそこが面白いと思って笑うが、決勝は違う。最初でひかれる可能性があってリスキー。準決勝ならいいだろう。これを準決勝でやるなら決勝では別のネタを2本用意する必要がある。
  • 「パン30個ください」というくだりについて
    これは「1人でですか?」と聞かれるためだけにあるのでは?しかし30個はそもそも2人で食べるにも多いだろう。また「1人でですか?」なんて普通は聞かない。

パンの個数に関しては、物凄く思っていたので言ってくれてありがとー!!という気持ちになった。しかし石田の指摘は「1人でですか?なんて普通は聞かない」というところにまで。たしかに。
福田はこの指摘をされて、「じゃあ6個にします」と言っていたが、その場で食べるわけでもなし、パンを大量に買うことはおかしくないので、(イートインならわかるけど)「1人でですか?」と聞かないで、この客が多めのパンを買うことが不自然な設定を作らなきゃいけないということなのでは。

  • 伊藤の死んだ妻「みさこ」と福田の死んだ妻「みさえ」の名前が紛らわしい。
    福田「できればみさこを変えてほしい。前はよしこにしたこともあるが、『ね、みさえ』にはみさえが一番しっくりくるから」
    竹内「じゃ、伊藤、変えられますか?」
    伊藤「いや〜みさこは譲れないな〜」w
  • ここがピークなのだから、一旦落ち着かせずに次にいったほうがよい
    福田の妻が畑に埋められている部分から一旦落ち着かせて次にいくのはもったいない。
    • 双子のくだりに入る際も伊藤の気持ちがない。
      もう少し抵抗するなどしたほうがよいのでは。
    • うどん屋のターンについても
      「じゃあうどん屋をやりたかったけど、パン屋やってるパン屋やって」の後、「はい」と伊藤は落ち着かせるが「やるよ、もう!」とかのほうがよいのでは。ペースを落とすな。
  • 焼きそばパンのところはもっと伊藤に熱量が欲しい。
    コントの中の伊藤なのか、LLRの伊藤本人なのか、どちらかにしたほうがよい。どちらがよいかは舞台で試してみて決めたら。

伊藤も実際今はどっちつかずでやっていると言っていた。実際にやってみてと言っているのに、全面的に委ねようとする福田は「で、どっちがいいですか?」と。竹内が「やってみてって言ってるだろ!!」と叱っていた。しつこい福田に石田は「うーん…伊藤は言わなそうだから、コントかな?」と答えていた。

  • やはりオチがダメ
    尻すぼみ、伊藤の苦笑いで終わるw 

女子会

ライブの時間があと5分となってしまい、女子会のネタについては大分駆け足になっていた。

  • ネタの入り「理由が軽い」
    「生まれ変わるなら女の子になりたいんだよね」→「なんで?」→「女子会とか楽しそうだから」というのは女子に生まれ変わりたい理由としては軽すぎる。このまま使うなら「女子会とか楽しそう」の後に福田が「それだけ?」と聞き返し、女子会はそんなに簡単なものじゃない、という風に話をもっていく方がいいだろう。

また、そこを含めた最初のおおよそ5行くらいについて、カットして全部で2ターンでいける、時間がないから楽屋で言う、と石田。
聞きたかった。

  • 「伊藤が女の子に生まれたいと思ってない」「思っているように見えない」

これについても伊藤の人間性が出ていないという話。

  • 今は福田の演説を聞くだけになっていて、伊藤はそれを促すだけの役割になってしまっている。「伊藤のサクラ感」。漫才なのだから二人が衝突しながら、伊藤が福田の言いにくいことを言って、それでも福田が上回ってほしい。

ここまで何度も会場から拍手が起きていたが、ここでは一番大きな拍手が。

  • 言葉で説明しすぎる
    「女の子は話を聞いているようでいてそれは次にする自分の話を考えている」という場面は、演技でもって話の準備をしているシーンを見せればよい。福田は演技力があるのだから、演技で説明しろ!見ている方も想像しやすくなる。
  • 会話のラリーがすごいという説明の際の例えについて
    NBAくらい」と言うが、「ラリー」の説明としてバスケは一般的じゃない。どちらかというとラリーはネットを挟んで打ち合うイメージなのでは?そこで盛り上がるならいいが、大して盛り上がらないのだから、いらない。
  • ガンダムのくだり
    福田が「ガンダムと一緒」と例えて、ガンダムの話をしだすが、そこで伊藤は「ガンダム?」と聞いているのに、最終的には「そんな話はいい」となる、矛盾している。
  • スターバックス」という名前がでてくるが、企業名やめたほうがいい。自分達のためにも。
  • 「映像をご覧いただこう」はいい。やっていくべき。

これはまるまる一日LLRのときにも審査員たちが言ってたよね。

  • 女子会再現の最後に福田が「このスタバを爆破してください」と言うところ
    あれは見る人によっては“福田本人”だと認識するのに時間がかかるだろう。女子会の再現の続きのように見る人がいると思う。「自分が思っているよりハマらないなーと思ってるやろ?」
    福田「なんでそう思ってるって、わかったんですか」w
    • それが分かるように「女性の内面をたたいとく」そうすると福田の意見だということが分かるようになる。

「内面をたたく」というのが素人にはどういうことなのか分からなかったが、再現のときの女性の演技を磨いて、福田本人との違いを分かるようにしておくということかな?

  • このネタはちょっと若い女性に寄りすぎてから、全方位にアピールするためにはどうするか考えないといけない。
  • オチがダメ(3度目)
    例えば…話を聞いているようで聞いてない演技で次のネタ考えてるとかね!


この3本だったらどのネタがいいかと石田にしつこく訊ねる福田。
石田は苦い顔で全部作り変える必要があるが「まあ…パン屋はダメかな…」と言っていた。正直全部ダメなんだろう…。3本の中なら女子会が一番福田らしさがあってよいかもしれないというニュアンスであった。

とにかく石田氏の凄さを目の当たりにした。ネタにおいて大切にすることの優先順位が明確にあるから話に説得力があるし、結果を出しているから持論に自信がある。言葉にして説明するのがとても上手くて、それだけで芸と言っていいのでは。

ライブの雰囲気と石田氏のダメ出しだけを書き留めておこうと思ったのに、大分自分の思いも漏れ出てしまったが、他にもめちゃくちゃ誰かと話したいことがあるのに、友達が軒並みこのライブに来られなくて、悲しくて泣きそう。

*1:本当にカミカミだったw

*2:ここで、みんな「しずる…」と思ったのでは…w

*3:私はさらばかなーと思いました

*4:そもそもババアだけじゃなかった

*5:ヘンな設定もってくるのありきになっているということだと思う