LLRのM-1 LAST YEAR〜M-1に向けてチャンピオンにネタのダメ出しをしてもらおう!〜 2017.9.13

第3回目にいってきた。
「3回目ですが、どうですか?」とMCの竹内に聞かれて、福田は「プロ野球で例えるなら、『肩をこわしている』」「ネタをこんなに書き直したことがないから、意味がわからなくなっている」などと言っていた。
竹内「まだわからないですね。大丈夫かもしれないし、肩をこわしているかもしれないし…」
今回のゲストはR-1チャンピオンのあべこうじ佐久間一行
ゲストが発表されたとき、なぜ漫才師じゃないのかと訝しんだが、古くからの付き合いで自分たちを良く知る先輩として、所作などを見てほしいというLLRからの希望らしい。結果、それに見事に応える二人だったし、本当にLLRのために素晴らしいアドバイスをしていた。第1回から最終回のこのライブまで完璧なゲスト設定!!すごいドキュメンタリーを見た。M-1の結果に反映されればもっとすごいが…

一人暮らし


このネタは去年の8月の幕張ファクトリーで新ネタとしておろしたものだが、先日*1の幕張ファクトリーで2本目のネタとして、久しぶりにやっていた。翌日のロードtoM-1でも披露しており、3分にまったく収まらずタイムオーバーしていたので、この日は数カ所カットしていた。

  • このネタの位置づけ
    あべ「まず、自信ある?」
    福田「初めてやりました」
    あべ「こういうのどうですか?ということね」
    M-1にかけるネタとして、自信を持っているようには思えないが、こういうネタもあるよ、という意味で今回やったのなら、まあ分かる、といった風のあべ。
  • LLRを初めて見る人がどう思うか
    佐久間「初めて見た人がどう思うか。僕達はLLRのことを知っているからいいけど…」
    まず話しだすと、福田が暗い感じで、ボケなのはわかる。伊藤がツッコミなのも分かるが、どういうタイプのツッコミなのか。ボケツッコミなのか、正統派のツッコミをするタイプなのか、というのがなかなか分からない。自分の場合はこの人たちはどういう人達なのかという疑問が解決してからやっと笑えるようになるから、そういう疑問を10秒くらいで解決してほしいと思う。「伊藤ちゃんの感じが伝わりにくい」
    あべ「ネタをやっているときの伊藤は違和感がある」
  • 2分の1でスベるというくだりについて
    (一人暮らしが寂しいならロボットを買えばいい、と伊藤が提案し、福田が自分がロボットと会話するのを再現する場面で、ロボットが福田が舞台でスベる確率は2分の1だと言う)
    あべ:“スベッた”というとこを処理したほうがいいのでは?伊藤に「そんなにスベってなくない?」と言わせるとか。あのままだと、お客さんは「そうなの?そんなにスベってるの?本当に?」となるだろう。それが処理されずに流れている。

この部分、幕張ファクトリーのときは福田が自分で「2分の1でスベるってなんだよ。」って言っていた。それがロードto M-1では、伊藤が「2分の1でスベッてるの?スベりすぎだろ」と言い、福田が「そんなもんだろ。俺なんて」というような会話になり、今回はそこへの言及がなくなっていた。

  • ネタの途中から話が変わる
    あべ:途中から話が変わって一人暮らしの話から女の子に話しかける話になる。最初からそれでいいのでは。
    元は違った。犬→ロボット→植物*2ときて、「(伊藤は)俺のことハメようとしてない?」「人間じゃないものばかり言ってきて…」というネタだったと福田。
    あべ「なるほどおもしろいじゃん。なんでやめたの?」
    やめた理由は「ウケなかったから」
    あべ:元のままで1本化したほうがいい。
    佐久間:しかし、伊藤ちゃんが(福田を)ハメるのはなんか違うだろう。キャラで見たら、福田がハメるほうが似合う。
  • お芝居の伊藤漫才の伊藤本当の伊藤
    漫才をしているときの伊藤は本当の伊藤ではない。本当の伊藤を出すべきである。
    あべ「多い。伊藤に言葉は」
    無理やりネタに合わせて伊藤がしゃべる必要はなく、伊藤ができるペースで言葉を発すればよい。もしも多くしゃべるのであれば、伊藤の間で。
    あべ「お芝居の伊藤ができてない。本当の伊藤が漫才の伊藤に出てこない。本当の伊藤のお芝居ができてない。」
    本当の伊藤を漫才中に出すためのお芝居ができていないという意味だと思われる。
    福田:伊藤には多面性がある。先輩に見せる伊藤と、俺達同期に見せる伊藤と、後輩に見せる伊藤は全部全然違うと思う。
    あべさく(二人)「それは分かってる!」
    あべ:そうだろうと思う。でも初めて見ても本当の伊藤じゃないと分かるだろう。そこをクリアしないといけない。それがLLRはできてない。
    あべ「このネタ絶対俺のほうが面白くできると思ったもん。それって最悪だろ?」
    伊藤「うわー!」
    例えばノンスタイルの井上なんて絶対井上じゃないと面白くない。俺にはできないと思う。そうでなければいけないだろう。
  • どう改善するか
    あべ:それを実現するには福田のプロデュースが必要か…
    佐久間:または、ネタを録画して、伊藤が自分で見てみるか。見てみれば絶対わかるだろう。「伊藤ちゃんにはネタを見る力はある。」
    伊藤はピン芸人の単独ライブの打ち上げに参加して、全員にネタのダメ出しをする。それがいつも的を得ている、と力説する二人。
    福田:どうすればいいのか。ハメようとしているネタに戻して、ハメようとする人物を逆に?
    あべ:それはなんとも言えない。やってみないと

部活


哲夫の意見を聞いて大幅改変。茶道部手芸部、演劇部の3部構成をやめて、茶道部1本に絞っていた。福田の一人芝居でドラマ仕立ての体育会系茶道部物語が繰り広げられていた。哲夫に提案されたボケをそのまま入れることはなかった。
福田「練習のときより動きすぎて体力がついていかなかった」

  • 茶道部だけにしたのは?
    あべがこのネタは前は3つあったのに、部活を茶道部だけにしたのはなぜなのか、と。
    福田がボケが思いつかなかったから3つにしたと思われるだろうと哲夫に言われたことを説明。一つの部活で追及してみた。「ただ、哲夫さんの言うのとはちょっと違う感じになりましたけど」
  • お茶室でランニング
    あべ「お茶室で走るところが(ボケがツッコまれずに)流れている」
    20周走るのは狭くない?それなのに、そういう部分が全然処理されていない。
    伊藤「一応言ってたんですけど…クチャってなっちゃって…」
    あべ「もちゃってた!」
  • 差引ができてない
    あべ:ボケとツッコミの差引ができていない。会話するのか福田が暴走して、伊藤のツッコミを寄せ付けないのか、どちらかにすべきだろう。
  • 客に向かってネタをしてほしい
    佐久間:二人だけでやっている。もっと客席に向かってほしい。福田の一人芝居後に伊藤が「長いわ!」と言うが、客席にもそう思わせたい。客席も伊藤と同じ気持ちになれるようにすべきである。
  • 細かい部分について
    • お茶たての捨て方
      改変部分で、重い茶筅*3を使って、捨てるシーンができた。そこについて。
      お茶たては後ろじゃなくて前に捨てたほうがいい、とあべ。
      福田「リアリティを追及しちゃいました」
      竹内「よく漫画だと後ろに捨てるからねw」
      あべ「いや、後ろに捨てたら見えないじゃん!」
    • 半年間
      後輩が「半年間がんばってきた成果を…」という部分について
      あべ「半年間なにやってたの?と思う。」
    • 先輩の名前
      あべ:先輩の名前を玉露*4に言わせるべき。なんでもいいから先輩の名前を決めれば1ボケ作れるだろう。それを聞いた伊藤が「○○って名前だったのかよー」などとツッコめる。
    • 後半いらない
      あべ:一人芝居して、それを伊藤が「イッセー尾形かよ」とか言うくだりはいらない。
      佐久間「いらないねー」
      あべ:「1回仕切りなおしてオチだけいうやつ。LLRやるよねー大嫌い。部活だけで終わればいいのに」
  • 元のネタと改変したネタと
    あべ「前のと今のどっちが好きなの?」
    福田:今のほうが好き。元々3つに分けたりするのは好きじゃない。しかし、こっちのほうがウケづらいとは思う。
    あべ「でも、なぜウケないのかは分からないということね〜」「それは、こっち(僕)も分からない」
    竹内「分かるかのように言っておきながら!」w
    佐久間:どうしても笑ってほしいというエネルギーが足りないのでは。

女子会


このネタは2回目の時の改変からまた更に改変されていた。前回加わった女子会を見ている37歳の福田はこわいというのは残しつつ、二人で女子会を再現する部分は減り、伊藤が福田にかみつく場面はなくなっていた。雰囲気としては元のバージョンに近い

  • 前半と後半がつながっていない
    このネタについて福田自ら「前半と後半がつながってないと思う」と。前半→女子会は怖いという部分、後半→それを聞いている福田がこわいという部分
    「そう!それで、オチも効いてこなくなっている」と佐久間。(前半で再現した相槌は打つけど全然話は聞いていないというのをオチでも使っている※石田案そのまま)
    前半の女子会に異常に詳しいところをつきつめれば、ネタ中に福田を「こわい」と言わなくても怖いヤツになっているだろう。女子会ベストも聞きたかった。
    女子会ベスト(福田が作成しているという録音した女子会で最も怖かった女子会ベストアルバム※新しいくだり)
  • 前半か後半か
    あべ「前半と後半どっちが好き?」
    今に関して言えば、後半が好きだと答える福田。しかし佐久間としては、入り口を膨らませたい、と思う。
    福田:もはやこのネタに原型はない。
    あべ:女子会のどこが恐ろしいかのラインでやっていったらどうか。「39年一人でいたんだから〜」のくだりのように、そこ?という部分を重ねていくのは難しいのか。
  • 細かいこと
    女子会を録音しているのは犯罪だろうのくだりで、福田は「バレないから犯罪じゃない」と弁明するが、そこは「俺も女子会の一員だから」だろう、とあべ。(福田が女子会の一員のように錯覚するくだりがあるから)
    福田「バレなきゃいいってやつが一番ヤバいから…」
    あべ「本当にヤバいヤツやらなくていいから!」
  • 根本のライン
    あべが「やっぱり構成なんだよねー」と言うと、福田は「いろいろ変わっていってるから…」と。
    佐久間:でもネタとは、そういうものだと思う。変わっていくもの。
    あべ:でも、自分たちは根本のラインは変えない。佐久間もそうだろう。自分の面白いものを突きつめてチャンピオンになっている。面白いと思っている部分をなくしたり変えたりはしない。
  • 福田のネタ作りのスタンス
    福田はネタを作る際に、できることとできないことで分けているかもしれない、と。やりたくてもできないと思ってしまう。あべになぜそう思うのかと問われると、少し考えてから、「伊藤のやりやすいようにやっているのかも…」と言うのだった。
    あべ「伊藤はやりやすくてもできないから!」
    佐久間は、福田のやりたいことに伊藤は全ノリすればいい、と断言。
  • ネタの尺と伊藤のツッコミ
    普段のネタ作りにおいて、LLRは福田がネタを書いて、伊藤に「こう言ったらどう言う?」と聞いて、ツッコミ台詞を決める。しかし、そういうやり方で作ったネタは賞レースの尺に入らない。
    あべ「福田の言ったことをつままなくてよい」(おそらく福田の言葉一つ一つに構っていかずにという意味)そういうのを切れば入るだろう。
    佐久間は、普段の寄席から時間を守るように訓練すればよいと。LLRは5分ネタのところ毎回6分とか7分とかやるから。
    あべは、伊藤は自分のターンが多いとは思わないかと聞くのだった。伊藤としては“間を埋めてる”気持ち。「笑顔がないのは?」と問われれば、「笑おうと思ったことはない」と答える伊藤。
    あべ「漫才のとき怖い」
    とにかく伊藤はそんなに発言しなくてよいというあべさく。
  • 福田は今のままでいいのか
    福田は今のままでやって、伊藤をおいてちゃったときの処理ができればいい、とあべ。
    福田「待っちゃいけないときに待っちゃう」
    二人「今日もあったー!」
    あべは、それはいらないやりとりがあるから待ってしまうのだ、と。
    福田「それは全然わからなかった…」
    伊藤「自分たちでは会話してるつもりだった」
  • 福田の覚醒
    結局のところ、とことんM-1に寄せるか、変えたくないなら突き抜けるか。M-1が終わった後のことを考えたらそれは大切なことだとあべ。
    佐久間もそうだと。R-1に寄せてネタを作っていたが、ウケているのに落ちたりしていた。芸人はウケることが成功だと思っていたのにダメなのか。それで、「R-1のほうが後輩なのになんで寄せなきゃいけないんだ!」と思い、自分のおもしろいと思うことを貫いたら優勝できた。
    福田「それしかない。ない気がしてきた!」
    「覚醒しました!」
    女子会のネタはM-1のネタをお客さんや芸人に聞いて決めようというライブで選ばれたネタ。今年はみんなにまかせて決めてもらおうと思った。なぜそう思ったかというと、去年は3回戦で自分が一番面白いと思うネタ*5をやったら落ちたから、人の意見を聞いてやってみようと思ったのだと。
    「なんとなく違和感はあった。正直言うと女子会のネタを面白いと思ってない!」
    「わかった!自分は自分が面白いと思ったことしかできない!このネタじゃない!」
    と台本投げ捨てる福田w
    あべは、そこで面白いと思ったネタの面白さがなぜウケなかったのか、と考えなかったのかと言うのだった。
    福田「俺の感性は一般の人間に合わないんだなと」
    竹内「格好つけるな」
    面白いと思うものを伝えることが技術なんだと伝えるあべだったが、そこはもう福田の耳には入っていない感じだった。
    福田「奇跡がおきる!」


ED


一人暮らしのネタのときも言われていた伊藤は自分のネタを見てみるべきだ、という話から、伊藤はアドバイスも上手くて、佐久間の井戸のネタも伊藤が「音楽のネタやったら?」ということでやったのだと*6
そこで福田が、ネタ全部録画して、伊藤に俺も両方にダメ出ししてもらえばいいですね!と。よさそう。
福田「なんかいける気がしてきました。おとついまでは決勝いけるなんて1mmも思わなかったけど…」
伊藤「昨日はどうしたんだよ」
福田「昨日はネタ作っててそういうこと考えられなかった」
福田「なんか頭の中で音が鳴りましたよ!」
あべ「椅子じゃない?」
竹内に、はっきり「決勝いきます」と言えといわれて…
福田「運命に影響して変わっちゃうかもしれないんで、なんとなくにしておきます!」
最終的には歯切れが悪い…w


ライブ前半でLLRを15年見てきたあべさくに“全然できていないこと”を突き付けられ、改善の余地なしじゃないかと、かなり泣きそうになったが、どういう風に直せばいいのか、直せないならこうすればいい、ということをアドバイスしてくれたし、結局このネタじゃないという当初からの問題にLLR(福田)を気づかせ、希望を与えてくれたのだった。

今回とても興味深かったのは、「どう思っているのか」というあべの質問に答える福田が言葉にしてみて初めて気づいたことがあるのかな?と感じたこと。
たとえば「伊藤がやりやすいようにやってる」というのも、無意識でやっていたのではないか。そして、伊藤の方は自分のやれることやれないことについては考えたこともなくて、福田の思う通りにやらなければ、と過剰に思っているところもありそう…
世間に伊藤がどう見えるか、というのは近すぎる福田にはもう分からなくて、伊藤本人のほうが見えるかもしれないなーと思った。だから、映像を見るのは本当によさそう。
しかし、チャンピオンたちが言うことは4人とも同じだったなー
「自分が面白いと思うことをやれ」

いや…なんだかすごく感動したけれど……よく考えたらなんだったんだ…

*1:2017年9月9日

*2:今回は植物はカットされていた

*3:「お茶たて」じゃなくて「茶筅」ですよね…

*4:茶道部ライバル校の生徒。新キャラ

*5:女のウソのネタ。一口ちょうだいのネタも好きとのこと

*6:えー!!ホントかな…